EVENT
2025年06月10日(火)

「らせん」と出会いなおす──暮らしを再生するための「福祉」と「言葉」

登壇者:佐々木明子、瀬川航岸

「あぶないから走っちゃだめ」「怪我するからさわらないでね」

 

小さい頃、繰り返し耳にしてきた言葉たち。私たちはこうして、目に見えない危なさから身を守り、「正しさ」に慣れていきました。けれどそれは、本来あったはずの感情や衝動に蓋をし、ひとりがひとりでいるために欠かせない喜びを、少しずつ手放していくことでもあったのかもしれません。

 

『らせんの日々』(ぼくみん出版会)に登場するのは、『私の生活改善運動』などの著作で知られる作家・安達茉莉子さんが、取材を通し出会った京都府・城陽市に位置する社会福祉法人〈南山城学園〉で働く職員の方々。実際にお会いしたこともなければ、お顔も声も知りません。しかし、紙にのせられたそれぞれの言葉をたどっていくうちに、「この人はどんなふうに笑うのだろう」「どんな道を歩んできたのだろう」と、知りたい気持ちが自然と芽生えてきます。

 

人を大事にするということ。目の前にいる一人と丁寧に向き合うということ。誰かを知ろうとすることは、自分自身の揺らぎを包容し、見つめなおすということにも繋がる。そうして見えてくるのは、これまで自分が身を置いてきた社会は、ほんの一部に過ぎなかったということ。安達さんが「最先端」として注視されている「当たり前」に何度も出会いなおしていくように、本書を捲るたび、驚きと静かな安堵が胸に満ちていきます。

 

このたび『らせんの日々』の出版を手掛けた「ぼくみん出版会」の瀬川航岸さん、そして南山城学園職員であり、本書にも登場されている佐々木明子さんをお迎えし、私たちの暮らしに必然的に根づく「福祉」と「言葉」についてお話をうかがいます。

 

生きやすさを共に考え、答えのない問いを共有する。互いの存在を肯定し、やさしさを再生していく。そうだった。人間は、もっとのびやかに生きていける。あなたも、私も。

 

この本がある世でよかったなとしみじみ感じます。『らせんの日々』に出会った方も、まだ読んでいない方も。この時間が、さまざまな状況を抱える誰かにとっての、ささやかな灯火となれば幸いです。

 

【登壇者プロフィール】

佐々木明子(ささき・あきこ)

社会福祉法人南山城学園所属。法人本部事務局企画広報課。課長補佐。学園内では主に広報、研修、実習調整などを担当。

 

瀬川航岸(せがわ・こうき)

1999年生まれ、滋賀県東近江市出身。立命館大学経営学部卒業後、ぼくみんのコーディネーターとして、滋賀県高島市の「TAKASHIMA BASE」や、京都市北区「船岡山オープンパーク」の運営など、地域にひらかれた場づくりに取り組む。20253月に立ち上がった「ぼくみん出版会」の主担当として、本を届け、活動や関係をネットワークする。