「どうして本屋を?」「なんでなんでしょうね」──二拠点生活者の健かな生存戦略
「どうして本屋を?」
この当然投げかけられることが想定されている質問に毎回うまく答えることができません。最近は「なんでなんでしょうね」とはぐらかしています。いや、ほんまに「なんでなんでしょうね」ではあるのですが。「本の文化を守るため」とか言えば済むのかもしれませんが、実態とあまりにも温度差があり、なかなかそこまで猫を被れません。そういう気持ちがないとはいいませんが、「いまやったら本屋楽にできそうやなー」という自己本位な理由の方がよほど多くを占めています。でも正直にいうとギャップからか嫌な顔をされるんです。なので「なんでなんでしょうね」に落ち着いています。とはいえ、「どうして本屋を?」という質問にスマートに答えられるようになりたいという願望はあります。ということで同業者と「なんでなんでしょうね」会議をしたいと思います。
ゲストのあかしゆかさんは岡山で「aru」という本屋を2021年にオープンされました。東京と岡山を行き来する二拠点生活をしながら、編集・ライターという他の仕事をやりながら、いまも月に1週間から10日ほど開店されています。なんていい働き方なんだと素直に思います。憧れますよね。そうなんです。本屋ってやりようによっては憧れられる仕事になるんですよ。そこに気づいているあかしさんは実に健(したた)かだと思います。うまいなと思います。あかしさんは「どうして本屋を?」という問いに対して自身のnoteでこう書いています。
“何度も何度も繰り返し問いかけてたどり着いた本当の気持ちは、「このために本屋をやりたいんだ!」といった明確な目的が、私にはない、ということだった。今回の本屋の件だけではない。思い返してみれば私は、今までの人生でほとんど、自分の行動に対して「目的」を据えたことがなかった。”
はい、「なんでなんでしょうね」の人です。でもこういう解答の方が健全であるように思います。それは目的に縛られていないためにつねに自分で軌道修正できるからだと思います。なによりどこにいくかわからない人のほうが周りから見ると楽しそうに見えます。二拠点という住まい方・働き方も「目的がない」という自由を担保するために選ばれていることがわかります。実に健かですね。あかしさんのようなプレイヤーが本屋をやっているのはありがたいことで、見習うところが多いです。
今回のイベントはサブタイトルが主題になりそうです。「二拠点生活者の健かな生存戦略」。どういう生き方が自分らしくあれるか。そのうえでどう社会にいい仕事が残せるか。人生の先輩であり、本屋の先輩であり、二拠点生活の先輩であるあかしさんと本屋から考えてみたいと思います。
【登壇者プロフィール】
あかしゆか(あかし・ゆか)
1992年生まれ、京都出身。 大学時代に本屋で働いた経験から、文章に関わる仕事がしたいと編集者を目指すように。 現在はウェブ・紙問わず、フリーランスの編集者・ライターとして活動をしている。2020年から東京と岡山の2拠点生活をはじめ、2021年4月、瀬戸内海にて本屋「aru」をオープン。
大森皓太(おおもり・こうた)
1995年兵庫県生まれ。UNITÉ/鴨葱書店店主。
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