
文筆と経営。一見するとまったく異なる営みに思えますが、実は根っこの部分で通じ合うものがあります。どちらも、自身の内側から立ち上がる「言葉」を媒介に、目の前や少し先にいる「他者」と少しずつ関係を築いていく仕事であるということ。
もちろん、こうした姿勢は多くの仕事に共通しますが、それぞれの著作である『そもそも交換日記』、『ちいさな会社のおおらかな経営』というタイトルからも窺えるように、土門さんと木村さんの営みには「言葉」と「他者」の関係がより強く、深く宿っているように感じます。
軽やかだったり繊細だったり、都度変わりゆく自分の輪郭をたしかめるように言葉を手繰る。ひとつの文章や製品を通し、共につくりあげる人びと、そしていつか手に取ってくれる誰かとの手触りを重ねていく。
他者との繋がりを強制的に断たざるをえなかったコロナ禍を経て、私たちはいま、むしろ「いつでも繋がれる」ことの脆さ、繋がり方の希薄さにも直面しています。指先ひとつで知り合えてしまう時代だからこそ、「そもそも、なぜこの人と関わっていたいのか」「この言葉は誰に届けたいのか」といった根本的な問いが、いっそう切実になってきているのかもしれません。
『そもそも交換日記』の復刊を記念し、書くことはもちろん、音声プラットフォームでも発信されているお二方から、雑談や対話から生まれる、あぶくのような明るさについて語り合っていただきます。たしかに心に残る、そんなひとときとなりますように。ぜひご参加ください。
【登壇者プロフィール】
土門蘭(どもん・らん)
文筆家。1985年広島生まれ、京都在住。小説・短歌などの文芸作品や、インタビュー記事の執筆を行う。著書に『100年後あなたもわたしもいない日に』(寺田マユミ氏との共著)、『経営者の孤独。』、『戦争と五人の女』。2023年、2年間の自身のカウンセリングの記録を綴ったエッセイ『死ぬまで生きる日記』で第一回「生きる本大賞」受賞。2025年、『そもそも交換日記』(桜林直子氏との共著)を復刊。趣味は読書、映画鑑賞、ボクシング。
木村祥一郎(きむら・しょういちろう)
1972年生まれ。1995年大学時代の仲間数名とITベンチャー企業を起ち上げる。以来18年間、商品開発やマーケティングなどを担当。2013年6月家業である木村石鹸工業株式会社へ。2016年9月、4代目社長に就任。石鹸を現代的にデザインした自社ブランド商品を展開。OEM中心の事業モデルから、自社ブランド事業への転換を図る。趣味は読書、映画鑑賞、キャンプ、ゴルフ。最近ギター練習中。
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